多血症について

貧血とは逆に血が多い(濃い)状態が多血症で、血液中のヘモグロビン濃度やヘマトクリット値、赤血球数が増加する疾患です。ほとんどの方は無症状で、健康診断などで指摘され、受診されることが多いようです。

しかし多血症では赤血球量の増加や血液の粘り気の上昇によって、いわゆる血液がドロドロの状態になり、高血圧や、体の血管の各所で血栓ができるリスクが高まります。それにより心筋梗塞、脳梗塞などの血栓症を引き起こす場合もあります。手足のしびれや麻痺、息切れや、胸のあたりの締め付けるような痛みなどがそのままにせず、できるだけ早期に受診してください。

また、以下のような症状が現れる場合もあります。

  • 頭痛
  • めまい
  • 視力障碍
  • 思考力減退
  • 離人症(周囲の出来事や人々、自分自身に対して現実感がなくなり、夢の中にいるような奇妙な感じに襲われる症状)
  • 原因不明の発熱や発汗
  • 入浴後のかゆみ
  • 肢端紅痛症(四肢の発赤と痛み)
  • 痛風
  • 脾腫による腹部膨満感
  • 粘膜や皮膚の出血
  • など

多血症の原因

喫煙

様々な多血症の原因の中で、最も多くを占めるのは喫煙です。喫煙時に発生する一酸化炭素は、酸素と比べ200倍ヘモグロビンと結びつきやすいとされており、体内が酸素不足に陥り、それを補おうとして赤血球が増加することで多血症を発症します。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)

SASは夜間に尿が増え、脱水症状になり血液が濃くなることと、睡眠中に度々呼吸が止まることによって低酸素状態になることが多血症を引き起こします。低酸素状態になると、それを補おうと代償性に赤血球が増加します。

睡眠時無呼吸症候群は、高血圧、脳梗塞、心筋梗塞を引き起こして突然死のリスクを高めますし、仕事や学業に支障をきたしたり、高所作業事故や交通事故の原因になったりする場合もあります。「肥満気味」「いびきが大きい」「日中の眠気がある」「呼吸が止まっていると指摘されたことがある」という方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性がありますので、お早めにご受診下さい。当院では睡眠時無呼吸症候群の簡易検査、治療も可能となっています。

エリスロポエチン産生腫瘍

造血ホルモンであるエリスロポエチンが増えることで多血症が引き起こされます。その原因として、肝細胞癌、腎細胞癌、脳腫瘍(血管芽腫)、子宮平滑筋腫、褐色細胞腫などの腫瘍が、エリスロポエチンを過剰に産生してしまっている場合があります。診断は血液検査により、エリスロポエチンを直接測定することで行います。

真性多血症(PV)

真性多血症は、血液を作る造血幹細胞の遺伝子異常により、赤血球を作る細胞が増殖して赤血球が作られ続けてしまう血液がんの一種です。真性多血症の診断では、JAK2遺伝子変異がほぼ100%(V617F変異95%、エクソン12変異3~5%)の症例で見られるため、診断に極めて有用となっています。

真性多血症の診断基準(WHO分類)は2016年に改定され、より低いヘモグロビンやヘマトクリットの値でも真性多血症と診断されるようになりました。

2022年1月現在、真性多血症の診断基準は次の通りです。

大基準1
ヘモグロビン値が男性>16.5g/dL、女性>16g/dL
もしくは ヘマトクリット値が男性>49%、女性Hct48%
もしくは 赤血球量の増加(平均正常予測値より25%以上多い)
大基準2
骨髄生検で骨髄が年齢に比して過形成で、三系統(顆粒球系、赤芽球系、巨核球系)の血球がいずれも増加している。
大基準3
JAK2V617FまたはJAK2 exon12の変異
小基準1
血清エリスロポエチンが基準値以下

※大基準3つ全てを満たすか、最初の2つ+小基準を満たすことが必要

初診時の採血による血液検査では、赤血球造血が大きく高まることにより、鉄欠乏や小球性貧血の状態を示すことがあります。また、白血球分画で好塩基球の増加が見られたり、血小板の増加や脾腫が見られたりすることもあります。

真性多血症では血栓ができやすく、脳梗塞や心筋梗塞、深部静脈血栓症や動脈血栓症を引き起こすリスクがあります。また、二次性発がん、骨髄線維症への移行、白血病への移行が問題となる場合もあるため、注意する必要があります。

真正多血症の治療では、血栓症のリスクを踏まえ、赤血球を減らすため瀉血といって血を抜く治療や、抗血小板薬であるアスピリンの内服、ハイドレア®やジャカビ®といった薬剤による細胞減少療法などで赤血球をコントロールするなどします。併せて肥満や生活習慣病も血栓症のリスクとなるため、治療していくことが大切です。

その他

多血症の原因としては上記のほかに、以下のようなものがあります。

  • 利尿薬の使用や、嘔吐・下痢などによる脱水状態
  • ガイスペック症候群(ストレス多血症)
  • 右左シャント
  • 腎臓関連(腎移植後、腎動脈狭窄、水腎症、嚢胞など)
  • コバルト中毒
  • POEMS症候群
  • 遺伝性の赤血球増多症
院長
小松 恒彦
診療科目
一般内科、血液内科、貧血内科、トータルエイジングケア、予防接種・ワクチン、トラベルワクチン、健康診断
TEL
047-407-2427
住所
〒273-0032
千葉県船橋市葛飾町2丁目344-1 CasaBH 1階
最寄駅
「JR総武線・武蔵野線・京葉線、東京メトロ東西線、東葉高速鉄道」西船橋駅南口3分
診療時間
診療時間 日祝
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14:00~18:00
休診日:木曜・日曜・祝日

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内科 血液内科