白血球の数に異常がある場合、血液疾患が原因である可能性があるため、血液内科での精密検査を受けることが重要です。特に、白血球の増加や減少が見られた場合、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄異形成症候群といった疾患が関係しているかもしれません。これらの疾患は、早期の診断と適切な治療が健康回復に大きな影響を与えるため、症状や検査の特徴を理解し、速やかに専門医を受診することが推奨されます。
【白血球が増加する疾患】の例
慢性骨髄性白血病(CML)
症状
初期には症状がほとんどない場合もありますが、疲労感、発熱、体重減少、頻繁な感染症、脾臓の腫れによる左腹部の違和感などが現れることがあります。
診断方法
血液検査で白血球数の増加が見られ、好酸球、好塩基球が増加することもあります。骨髄穿刺検査や遺伝子検査(フィラデルフィア染色体の有無)によって確定診断が行われます。
治療
慢性骨髄性白血病(CML)の治療は、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が中心です。主要なTKIには、イマチニブ、ダサチニブ、タシグナ®(ニロチニブ)、ボシュリフ®(ボスチニブ)、アイクルシグ®(ポナチニブ)、セムブリックス®(アシミニブ)があります。これらの薬剤は、フィラデルフィア染色体による異常なチロシンキナーゼ活性を抑制し、白血病細胞の増殖を制御します。治療は通常経口薬で、患者の生活の質を保ちながら長期管理が可能です。TKIの効果が不十分な場合や耐性が生じた場合には、他のTKIに変更するか、骨髄移植を検討することがあります。治療により、病状のコントロールと長期生存が期待されます。
慢性リンパ性白血病(CLL)
症状
進行がゆっくりしているため、長期間無症状のこともありますが、疲労感、頻繁な感染症、リンパ節の腫れ、夜間の発汗などが見られる場合があります。
診断方法
血液検査でリンパ球の数が異常に増加していることを確認します。さらに、骨髄検査やリンパ節の生検によって診断を確定します。
治療
慢性リンパ性白血病(CLL)の治療は、症状や病状進行の有無に基づき決定されます。治療開始基準には、リンパ節の大きな腫れ、脾臓や肝臓の腫大、進行する貧血、血小板減少、B症状(発熱、体重減少、夜間の発汗)などがあります。治療には、BTK阻害薬(イムブルビカ®(イブルチニブ)、カルケンス® (アカラブルチニブ))、BCL-2阻害薬(ベネトクラクス)、CD20抗体(リツキシマブ、ガザイバ®(オビヌツズマブ)、フルダラビン、ベンダムスチンが用いられ、組み合わせて使用することもあります。症状がない初期段階のCLLでは、治療を行わず経過観察が一般的です。治療により、病状の進行を遅らせ、症状の管理を図ります。
【白血球が減少する疾患】の例
再生不良性貧血
症状
疲労感、息切れ、めまい、出血傾向(鼻血、歯茎の出血)、頻繁な感染症が見られることがあります。これは、骨髄で血液細胞を十分に作れないことが原因です。
診断方法
血液検査で赤血球、白血球、血小板の減少を確認します。さらに、骨髄穿刺検査で骨髄の細胞が減少していることを確認して診断します。
治療
再生不良性貧血の治療には、シクロスポリンやATG(抗ヒト胸腺細胞グロブリン)を用いた免疫抑制療法、蛋白同化ステロイドであるプリモボラン、ロミプレート®(ロミプロスチム)やレボレード®(エルトロンボパグ)などのトロンボポエチン受容体作動薬が選択肢です。若年・重症者には骨髄移植が行われます。薬剤への反応が乏しい場合は輸血を行います。
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)
症状
突然の貧血、息切れ、頻繁な血栓症、尿の色が暗くなる(特に朝)、腹痛などの症状があります。これらは赤血球が異常に破壊されることによって引き起こされます。
診断方法
血液検査で赤血球の破壊の兆候(溶血)を確認し、フローサイトメトリーを用いて赤血球の異常を検出します。再生不良性貧血とオーバーラップすることもあります。
治療
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療には、補体阻害薬が使われます。ソリリス®(エクリズマブ)とユルトミリス®(ラブリズマブ)は補体活性を抑制し、溶血を防ぎます。新しい薬であるピアスカイ®(ペグセタコプラン)は、別の経路で補体を抑制することで治療効果を発揮します。これらの治療を行う際には、髄膜炎菌ワクチンの接種が推奨され、感染リスクを低減します。重症例では骨髄移植が根治的治療として検討されることもありますが、リスクが高いため適応は慎重に判断されます。これらの治療法により、溶血の管理と症状の改善を図ります。
骨髄異形成症候群(MDS)
症状
貧血症状(息切れ、めまい、顔色不良)、出血傾向(鼻血や歯茎からの出血、あざができやすい)、疲労感などが現れることがあります。
診断方法
血液検査での異常(貧血や白血球・血小板の減少)に加え、骨髄穿刺検査で骨髄細胞の形態異常を確認し、診断が行われます。
治療
骨髄異形成症候群(MDS)の治療は、病状や患者の状態に応じて異なります。アザシチジンは、異常な細胞の増殖を抑える薬剤で、白血病への進展を遅らせる効果があります。貧血や血球減少には輸血が行われ、重症例では根治を目指して骨髄移植が検討されます。ネスプ®(ダルベポエチンアルファ)は、赤血球の産生を促進する薬で、貧血改善に使用されます。レブロジル®(ルスパタセプト)は、赤血球成熟促進薬として造血幹細胞から赤血球への分化過程の後期段階における分化を促進し、成熟した赤血球数の増加を誘導します。これらの治療を組み合わせて、症状の緩和や生活の質の向上を図ります。
早期受診の重要性
白血球数の異常は、これらの疾患の初期症状として現れることが多く、早期に診断して適切な治療を開始することで、病状の進行を遅らせたり、症状を管理したりすることが可能です。当院の血液内科では、経験豊富な医師が最新の診断技術を駆使して、個々の患者様に最適な治療方針を提案します。
白血球数の異常が健診などで指摘された方や、体調の変化を感じている方は、どうぞお気軽に当院にご相談ください。